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「おつかれさまでーす!」  仕事終わりに真っ直ぐ向かった、個室完備のちょっと洒落た居酒屋。ここに来るのは一年ぶり。待ち合わせ相手と会うのも一年ぶり。 「崇純さん!」 「よう、龍樹!」 「相変わらず大物ミュージシャンしてますねー」  彼も来たばかりだったのか、ハットと伊達メガネで変装したままだったので、ちょっと揶揄かってみる。 「お前も老けないなぁ。明日で?」 「44ですよ」 「マジかぁ。俺も年取るわけだわ」  崇純さんは僕の8歳上だから…52になるんだったっけな。  高校時代に彼のバンドのローディーをしていた縁で、未だにお付き合いをさせて頂いている崇純さんは、実際に大物ミュージシャンだ。  当時のバンドは解散してしまったけど、今でもビッグネームだし、現在の活動は多岐に渡る。  本来なら一介の会社員の僕なんかがサシメシ出来るような相手じゃないんだけど、今でも僕を可愛がってくれていて、年に一度、僕の誕生日の付近には必ず食事に誘ってくれるのだ。 「ま、座れよ」  言いながらハットとメガネをはずし、テーブルの上の呼び出しボタンを押す。
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