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「そういうことかぁ」  MVの撮影と一緒に、ジャケ写の撮影もするもんな。歯を見せて笑うわけじゃないけど、念の為ってことだ。完璧主義のサキさんらしい。 「何時?」 「10時」 「もっと遅い時間にすれば良かったのに」 「そこしか空いてなかったんだよ」  クリーニングしに行くだけだっていうのに、玲次はとことん浮かない顔だ。僕は知ってるぞ。  玲次は歯医者が人並以上に、苦手だ。  別にひどい虫歯を作ったこともないくせに、どうしてもダメなんだよね。音が嫌だとか、匂いが嫌だとか。あれこれガタガタ文句言ってるけど、単純に怖いんだよ。  ってことは。 「じゃ、出かけるまでにキッチンだけ片付けるから、玲次は目覚ましといてよ」 「ああ……うん」  そう、必ず僕がついて行かなきゃいけない。一人で行けって言っても、何だかんだ理由をつけて僕を連れて行く。  そのやり取りはもう何度もやったから、繰り返すのもめんどくさい。ごちゃごちゃ言わずについて行ってやった方がよっぽど楽なので、最近は何もつっこまずについて行くことにしてる。流石に診察室までは一緒に行かないけど。  半分寝ながら玲次は朝食を食べ終わり、食器を流しに下げる。僕も食べ終わったから、流しに向かう。
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