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拝啓 滝川 一颯様
真っ青な空に入道雲が湧き上がる盛夏の季節になりましたが、いかがお過ごしですか。
私達が初めて逢った季節になりましたね。
時が経つのは早いもので、私が東京へ来てもう三ヶ月です。
私の最後の言葉は、颯くんに届きましたか。
こちらにきて毎日思うのは、颯くんと過ごした九ヶ月間のことばかりです。
初めて逢った日のことは、いまでも鮮明に思い起こされます。
杏子に連れられて出掛けた水族館で、颯くんがいた時は本当に驚きました。
あの時の私の衝撃はどう言葉で表現しても、伝えきれないと思います。
それくらい、私はびっくりしたんですよ。
でも、颯くんは私のことは知らなかったんですよね。
実は颯くんには隠していたことがあります。
私、本当はずっと前から、颯くんのことを見てたんですよ。
いつもあなたの走る姿を目で追っていました。
運動ができないわたしは、毎日グラウンドを颯爽と駆ける颯くんに憧れていたんです。
常に集団の先頭を走る颯くんの姿は、本当に風のようでした。
部活の仲間と楽しそうに走る颯くんに、私はずっと見蕩れていました。
颯くんが走る放課後の時間。
それが私の学校生活の中で一番楽しみにしていた時間でした。
ですから、あなたと引き合わせてくれた杏子には、とても感謝しています。
いまだから聞いてみたいんですけど、二度目のデートで告白した私を、颯くんはどう思いましたか。
軽い女だと思ったりしなかったでしょうか。
私、告白もお付き合いも、颯くんが初めてですよ。
信じてください!
あの時は、本当にドキドキしました。
あの時というより、デートが決まってからずっとドキドキでした。
日が近づくにつれ、心臓の鼓動はドクンドクンと強くなって、その音があまりにうるさいから、眠れない日がずっと続いたんですよ。
だから、デート当日も睡眠不足で、告白したときはかなりハイになっていました。
でもだからこそ、告白の勢いがつけられたのかもしれないですけど。(笑)
あの時は無我夢中だったから、颯くんの表情をよく覚えていません。
あなたはどんな顔してたんですか。
驚きの顔?引いちゃった表情?それとも全く別のものですか?
いい結果でしたから良かったですけど、これで悪い結果だったら、私はどれだけ落ち込んだことかわかりません。
颯くん、私とお付き合いしてくれて、本当にありがとう。
あなたの恋人になれて、私は本当に幸せでした。
最後の私の言葉はきちんと届きましたか。
今日のところはここまでにしておきます。
またお便りしますね。
かしこ
新城 夏帆
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