第一話 my girl

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 明日から三年生になる。  ようやくパズルが完成した。いや正確にいえばあと一ピースだ。  4999ピースを組み立てたパズルは、夏帆と初めて会った夏の風景によく似ていた。  濃い空色の中に(たくま)しく大きな入道雲が浮かぶ青空の風景のパズルは、否応なく夏帆を思い起こさせる。  そう、あの夏の思い出を形に残したくて、俺はこれを作ることを選んだんだ。  そんな理由すら、忘れてしまっていた。  パズルの中の入道雲に、ポカンと開いた失われた穴は、夏帆を失った俺の心に開いた穴と同じように、ただどうしようもなく寂しく見える。  諦めたくなくて、部屋を引っ掻きまわしてくまなく探したけれど、最後のピースはついぞ発見することができず、作品はとうとう完成させることができなかった。  作品を作る喜びは、結局中途半端にしか理解できず、最後の一ピースが足りないことで、壊れた自分も元には戻らないような、そんな気がした。  そしてパズルの中の、あの夏の風景のポッカリと開いた穴から、麦わら帽子と白いワンピースを着た夏帆が、いまにも飛び出して来るような、ありもしない錯覚も覚える。  完成はしない。  けれど、これはこのままにしておくべきだろう。  中途半端だった自分への戒めとして。  きっと、夏帆という一欠片のピースがはまらないと、俺の心は永遠に完成しないような、そういう思いにも駆られる。  俺を埋めてくれるピースを当てもなく探すのか、それとも心が曖昧になるのを待つのか、答えを出すには、まだ時間が途方もなく足りない。  でも夏帆と最後に観た、あのマイ·ガールの主人公の少女のように俺も向き合わなければいけないと、強く思う。
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