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6.恋結び 一最終話一
「あ、んっ!なんで?こんな⋯⋯!?」
「体液交換したからな」
感度が良くなるだろ、と言いながら体中にキスをする。
指が増やされ、ぐちゅぐちゅとかき混ぜられた。中からは水音が聞こえてくる。
こりりと弄られた場所に、つま先まで快感が痺れた。ペニスの先から雫が飛ぶ。
「ん!そこ!!」
「は、あ。こっちも限界」
足を開かれ、入り口に太くて長いペニスが押し当てられる。
一気に中に押し入れられて、意識が飛びそうになった。
擦られてはずるりと抜かれ、自分とは思えないような甘い声が出た。
もう一度ゆっくりゆっくりと挿し込まれる。
自分の中がねっとりとあいつに縋りつくのが分かって、腰が震えた。
腿を抱え上げられ、激しい律動が始まった。
「あああああ!」
自分の中に注がれた迸る熱を受けて、確かにもう一度、極めたのだと思う。
体中が、快感と湧き出る力に満たされる。
夜通し何度も名を呼ばれ、繰り返し、愛の言葉を囁かれ続けた。
朝になって目を開ければ、身動きできないぐらい強く抱きしめられていた。
「あ!仕事!!」
起きようとしても、体が動かない。
「⋯⋯大丈夫」
「何が?」
指と指を固く絡めていた男が、耳元で囁く。
「交合で縁結びが強くなって、社までちゃんと『気』が届いてるから」
ぞくぞくするほど色っぽい顔で見つめられて、頭が沸騰しそうになった。
ちゅ、と頬にキスが降ってくる。
そっと腹に手が置かれて、愛し気に撫でられる。
「⋯⋯妊娠したかもな」
「ば、ばっかじゃないの!?男が妊娠するわけないだろ!」
ニヤリと笑って、あいつが言った。
「お前と俺が交わったら、一夜で子が出来たんだろ。なあ、木花咲耶」
「瓊瓊杵尊⋯⋯!!」
遥か昔の神話の世界。
天照大御神の孫の瓊瓊杵尊は、立ち寄った岬で、木花之佐久夜毘売に出会う。父親の大山祇命に姉の石長比売と妹の木花之佐久夜毘売のどちらも娶るよう言われたが、妹に一目ぼれした瓊瓊杵尊は妹とのみ結婚した。
二人は初夜の後、一夜で子を成したと言う。
神々は生まれ変わり、人に姿を変えて人界に潜む。
僕と瓊瓊杵のように。
「ようやく、うちの一族とお前の父上に許可をもらった。これで晴れて結婚できる」
「え?もしかして、トラブルって⋯⋯」
極上の笑顔でにっこり笑う。
「お前と結婚できなかったら、二人で黄泉に駆け落ちするって言った」
僕は、目の奥が熱くてどうにもならなかった。
「姉さんと結婚すれば、永遠の命が手に入ったのに」
「⋯⋯俺は花のように短い命でも、お前といられる方がいい」
僕は、瓊瓊杵の首に腕を回して口づけた。
「ににぎ、愛してる」
「俺もだ。咲耶」
僕たちは、もう一度口づけを交わした。
その日、富士の峰にある僕の社は、見たこともないほどの光に包まれたと言われている。
一 了一
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