56人が本棚に入れています
本棚に追加
それから一週間が経っても、エドワードは相変わらず原稿を書き、夕食に何食わぬ顔で出てきて、食べると部屋に戻った。
2人で住んでいるのに、心は1人だ。
ゆうきはもう、エドワードが美味しそうに夕食を食べるのを見ても、素直に喜べなくなっていた。
この家にきて二週間ずっとそんなことが続いた時、ゆうきはとうとう、キレた。
きっかけは、本社から届いた一本の電話だった。
『はい、ゆうきです』
『どうだ?エドワードの原稿はできてるか?』
『ああ…すいません。そのことに関しては本人に任せてるんです』
『どうして?編集なんだから急かしたっていいのに』
『もしかして、進捗に問題ありましたか?』
『問題っていうか…まあ、どちらかと言えば「大問題」かな』
『どうしたんです?』
『それがね…あ、今1人?』
『はい』
『よかった。実は4日前から社員の女性と連絡がつかなくなってて。多分その子、先生の家に泊まり込んでんだよ』
『……は?』
『先生から原稿が進んでるって話もないだろ?多分だけど、書かないでずっと…』
『もうやめてください!充分、充分です……』
つまり、二人暮らしではなかったのだ。4日前から…。
ゆうきはおかしくなって、笑いがこみ上げてきた。
『前もおんなじようなことがあったんだ。何回もね。全員辞めていったよ。彼女たちは本気なのさ。でも、先生はそうじゃない』
ゆうきは電話を切った。
最初のコメントを投稿しよう!