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ロンドン・ヒースロー空港に降りた。
ゆうきとおんなじ飛行機に乗ってきた人たちのせかせかした足取りにつられて、ゆうきも重い足を無理やり動かす。
海外でよく聞く「ロスト・バゲージ」も無く、無事にレーンに乗ってきた青いスーツケースを見てため息をついた。とうとう、ほんとうに来てしまったのだ、ロンドンに……。
周りは白い肌と、時々黒い肌しか見えず、ゆうきと同じ肌の色はほとんどが中国語を喋っていた。
約束の場所で待っていると、5分後に日系人の男に声をかけられた。
「待たせてすみませんね」
「あ、タナカさん…?」
「そうそう。そうです。立花ゆうきさんで合ってます?」
「はい」
「今から本社の方に行くので、車は用意してあります」
車、と聞いて、すぐに拉致を連想してしまうのは過敏だろうか?
ドキドキしながらタナカに着いていくと、待っていた大型の外国車には、これまたデカデカとした会社の名前が書いてあって、それが自分の会社の社名であることに心底安心した。
「いやー、私聞いたことないですよ。日本支社から来た人」
「そうなんですか?」
「もう噂、知れ渡ってますから」
「噂?」
ゆうきが聞き返す。
「あなたね……エドワード・サイラスと言ったら、映画化されればヒットは確実、時に千万のヒットを出す人ですよ」
「つまり、僕が引き抜かれたのにいい顔しない人もいるわけですね」
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