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イギリスに春の陽気が舞い込んできた頃、とうとう2人の関係が動き出した。
「小説、半分まで終わった」
夕食の席で、エドワードがなんでもないことのようにゆうきに告げた。
「本当ですか!」
「まだこれから先は長いけどね」
「いいんですよ。ペースは悪くない。むしろ早いですよ。さすが、ヒットメーカーはすごいなぁ。尻叩かないでも書いてくれる作家さんはあなたが初めてです」
「尻は叩かれてるよ」
「僕、そんな言いましたけ?」
「あの話、忘れたの?」
「あの話?」
「君が言うとおりにしてくれるんだったら、書くってやつ」
「ああ、そういえば」
「あれ、本気で言ってたの?」
「そう…ですよ。だって、あなたが顔面蒼白で夜中に呼び出した時、ただ事じゃないなと思って」
「優しいね」
2人は食べ終わった後の食器を運んだ。
食後の紅茶を2人で飲む。
「今夜、お願いしようと思う」
「お願い…ああ」
ゆうきももうこの歳だ。誘われている、くらいはわかる。
「でも僕、男の人としたことないんですよ」
「まあ、それが普通だろうね」
エドワードがゆうきに、リビングのソファに座るように手を引いて誘導した。
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