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「次郎兵衞、次郎兵衞はいないかい? ああ、いたいた。ちょいとこっちへおいで。絹子とお梅はもうこっちへ出てきてるのかい?」
「へい。すでにこっちに来ておりやして、おこたで一息ついてらっしゃいます」
「そうかい、じゃああたしも挨拶がてら行こうかねえ。そうだ、のぶ子さんが見えたらまずはあたしのところに通しな」
「へい」
次郎兵衞はまるで馬のようにテンポよく座の周りを走っているところでキツネに呼ばれて駆けつけた。
腰を曲げて低姿勢になり、ひひひんと一つ鼻を鳴らす。その声は甲高く耳心地悪いが、何度か聞いているうちに癖になるものであった。
次郎兵衞は絶対にキツネとは目を合わさないようにしていた。
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