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客の中には理解した者もいるし、未だにわかっていない者もいた。それを無視し、
「時はそう、今からたった数百年ばかり前の延長六年のことだよ。当時のあたしにはそれはそれは大層好きな男がいてね。どうにもこうにも何も手につかない。困ったもんさ。心の臓が弾け出るとはこのことかと思った。そうさ、狂ったんだよ。ふふ、若かったんだ。若いときなんてどの時代もそんなもんさ。ねえ、そうだろうそこの兄さん」
客がどこだどこだと辺りを見回している間に高座にはすうっと絹子が姿を現した。
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