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炎のように真っ赤に燃える色の着物に黄色い帯、後れ毛を細い手ですくい直す仕草に喉が鳴る。
不意に絹子が目を向けた先には最後にここに入ってきた男、堤が体を前のめりにして膝の上で手を組んで座っている。
無のところからいきなり現れた絹子と目が合った堤は目だけで左右を確認し、俺か、他の誰かなのかを確認したが、となりにいる人たちはにっこり笑ったまま壇上の絹子をじいっと見ていた。
俺か。
堤はそう思うと唾をごくりと飲み、壇上の絹子に視線を戻す。
そこにいる絹子はもう堤には目もくれていなかった。
絹子が昔を思い返すかのようにすと目を細めて顎を上に上げた。
真っ赤な紅をひいた唇を横に長く引き、ゆっくりと口を開いた。
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