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しばらく起きなかった安珍だったが、絹子の気配を感じて目を覚ますと、隣で熟れた目をして己を見つめる絹子の姿がそこにあった。絹子は迫ってきた。
これはいけない。私は修行中の身。女子にうつつをぬかしている場合ではない。煩悩を断ち切らぬことには先へ進めないのだ。
安珍は己の今の立場を絹子に優しく説いた。
絹子も絹子ですこぶる美しい。安珍だって唾を飲んだりもした。
しかし、ここで絹子に流されてしまっては今後どうにも立つ瀬がない。
しかし絹子もまた引かぬ。
絹子もここで引いてはもう二度と会うことが叶わぬことを知っていた。
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