5人が本棚に入れています
本棚に追加
仕方なく安珍は絹子に、
「私は熊野まで詣らねばならぬ。だから三日ほど待ってほしい。帰りは必ずここへ寄る」
安珍は苦し紛れにこんなことを言ってその場をやり過ごそうとした。
絹子を騙すことは仏の道に反しないのか。問答もした。しかし、一晩泊めただけの者ゆえ、二、三日もすれば忘れるだろうと思っていた。
絹子は息を整え落ち着かせ、三日待てば戻ってきてくれる。三日だ。と自分にいい聞かせて安珍を信じて見送った。
最初のコメントを投稿しよう!