7/26
前へ
/100ページ
次へ
 仏滅に入った夜夜中の二時間だけ、しかも月に一回だけ開くこの座は常に満員御礼であった。  もちろんのこと今日も客席に空席はない。  全ての席が予約で埋まっていた。  この客の選別と管理をしているのが、小田休(おだきゅう)という座長の男。  仕立てのいい黒の紋付に坊主頭、不機嫌そうな顔。たまに女言葉を話し、笑うときは口元をちょいと袖で隠すその仕草に、客は同じタイミングで首を横に傾げる。それを見てほくそ笑む少々癖のある男である。  一席ん十万円という値段にも関わらず、ここへ来たい客は後をたたない。彼に会いたいという奇特な客はもちろんであるが、そのほかにもある。  それは……
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加