プロロ-グ

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 いつも通りの朝の筈だった。  マンション3階のエレベーターホールにいるのは、いつもの人物達。  男子高生の遠藤えんどう 春馬はるま、公務員の蕪木かぶらぎ 優樹ゆうき、その妹で、春馬と同級生の蕪木 緋久子ひさこの3人だ。  チン、という高い音がエレベーターが3階に着いた事を知らせると、数秒後にエレベーターの扉が開く。  いつも通りに中に入る。が、エレベーターの床である場所には、黒い大きな穴が空いていた。  悲鳴を上げながら落ちる3人。 ♤♢♡♧  落ちた先にあるのは、神殿なのか、何なのか。白い壁とステンドグラスでできた建物だった。  高い所から落ちた感覚だった割に、トスン、という低い所から落ちたような音。もちろん、怪我なんてしていない。 3人が乗っているのは、建物の中心にある丸い台座のような物の上で、床からはさほど高くない所にあった。  何が起きたのかわからず、きょとん、とする3人。  それはほんの一瞬だったようで、最初に優樹、次に緋久子と春馬がほとんど同時に我に返る。  がやがやと周りが騒がしい 「成功したぞぉ!」  そう言いながらポ-ズを決める人。無言で、嬉しそうな顔の人もいる。十数人いる人はロ-ブという上着や鎧を着ており、彼らの髪の色は、金銀銅、緑、茶など色鮮やかだ。  そして何よりもここが異世界だと認識できるモノ……何人かの頭の上にあるのは、『地球』で所謂いわゆる『ケモ耳』がある、獣人の存在だった。  すっ、とこちらに向かって近づいてくる者がいた。柔らかそうな金髪、澄んだ海のような碧い瞳、周りより幾分豪華な服装の青年だった。 「ようこそ。勇者様と、ね……猫人ぉ?!」 「……は?」 「え?」  きょとん、とした顔の優樹と緋久子。  我に返ったのは緋久子の方が早かった。くすくす笑いながら兄の方を見る緋久子。  「お兄ちゃん、猫耳と尻尾しっぽ生えてる。可愛い!」  言われて自分の頭を撫でる優樹。  言われた彼もまた、妹の方を見ていた。 「そういうチャコもな。茶色の耳と白い尻尾生えてるぞ。……ああ、種類は三毛猫っぽいな」 「お兄ちゃんも同じだよ~」  『チャコ』と言うのは、緋久子のニックネームである。子供特有の発音『ヒチャコ』からきている。  優樹も緋久子同様、茶色の猫耳、白い尻尾、黒髪の獣人間になっていたのだった。  兄妹が話している間、取り残されていた春馬が青年に話し掛ける。 「あの、貴方は?」 「ああ、僕は、第一王子のエドガー。君達の後見人を務めさせていただく」  断定するようにそう言って、エドガーが穏やかな顔で3人を見つめる。  春馬達が落ち着いたのを見計らうように、エドガーが声を掛ける。 「父の……王に会っていただきたいのですが、その前に少しいいですか?」 「何でしょう?」 「ステータスの確認をして欲しいのですが、ああ、名前の確認と種族、職業ジョブ、称号だけで結構です。そうだ。技能スキルが気になるなら、それも見て良いですよ」 「ステータス? っていうと、ゲームの奴か?」 「げえむ?」  きょとん、とするエドガーに、春馬達3人が苦笑する。 「いや、こっちの話です」 「お気になさらず」 「そうですか。では、『ステータス』と唱となえてください。貴方自身のステータスが見えるはずです」  エドガーに言われた通りにする3人。彼らのステータスは、それぞれ次の通りだった。 遠藤 春馬 エンドウ ハルマ   種族 人間   職業ジョブ 勇者   副業サブジョブ 旅人   称号 異世界から召喚されし者   技能スキル 異世界言語 全属魔魔法 柔術   装備 学生服 学生鞄 蕪木 緋久子 カブラギ ヒサコ   種族 ケットシ-   常時擬態 人間   職業 聖者   副業 剣聖   称号 異世界から召喚されし者   技能 異世界言語 火属性魔法 水属性魔法 風属性魔法 剣術   装備 学生服 学生鞄  地球で高校生だった2人の学生服は、灰色のジャケット、白いワイシャツ、学校指定のネクタイ、青系のチェックのスラックスもしくはスカ-トである。鞄は、白い帆布で作られたふたのあるしっかりした物で、手提てさげ、ショルダー、リュックサックになる便利な鞄だ。 蕪木 優樹 カブラギ ユウキ   種族 ケットシ-   常時擬態 人間   職業 聖者    副業 尋問官じんもんかん 鑑定士   称号 異世界から召喚されし者    技能 異世界言語 全属性魔法 鍛冶 剣術 神眼   装備 オーダーメ-ドス-ツ ビジネスバッグ  優樹は、地球で社会人だった。職業は検察官。所謂いわゆる検事というやつだ。聴取ちょうしゅをとったり捜査をしたり、とアクティブに動くタイプの人間だった。『尋問官』と言うのは、そんなところからきているのかもしれない。  そんな彼の服は、ライトグレーのオーダーメ-ドス-ツで、流行に流されないデザインの服である。お尻を隠し、躰からだに似合う適度なウエストのジャケット、スラックスは、細くも太くも無くシュ-ズに乗るくらいの長さがある。そして、白いワイシャツ、小さなパンダの柄模様のネクタイ。鞄は、ダ-クブラウンの革製のふた付きで、リュックサック、手提げになる物だ。  『ステータス』で本人のみが確認でき、『ステータス・オープン』で他人に見せる事ができる。  エドガーが改めて3人の職業と称号を確認て、静かな声で3人に声を掛けた。 「では、お三方。王の間にご案内いたします」 . 
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