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「はあ? お前、練乳いちごをご存じない? 遅れてるぞ。練乳いちご牛乳は超人気商品で、今ここでこれを選ばないともう飲めないかもしれないよ! 絶対これにした方がいいよ」 「そんなことにはノエルはだまされない!」  僕はおかしくて少し笑った。 「騙されるもなにも嘘じゃないし、半分くらいは。ね?」  急にカケルが僕に話を振ってくる。僕はちょっとだけびっくりしたけど、すぐにこくりと一つ頷いた。 「……僕も好きです」  普通に話せた。僕の返事を聞いて、カケルは流れるように一瞬だけ優しく笑う。吐きそう。ちょっと無理。僕を見ないで。変になりそう。なんで。  これはなに? 「でもノエルはいちごがいい」  ノエルは譲らなかった。カケルは苦笑する。ノエルは思い通りにならなかったのが嫌だったのか、いじけてカケルの肩にぎゅっと顔を押し付けた。僕はノエルの黒うさぎのぬいぐるみと目が合う。黒うさぎはなにも言わないけれど、ちょっと困っているように見えた。 「分かったよ」  カケルがノエルの背中をぽん、と叩く。でも背中には黒うさぎの入っているリュックがあったので、腰のあたりだった。僕のほうを見てくる。  僕の体はネジが切れてしまった人形みたいに硬くなった。  この二人なんなんだろう。  兄弟にしては似てない。  でも兄弟じゃないならなんだっていうんだろうっていうくらい、お互い信頼しきっているのがひと目見ただけで分かる。  近所のお兄ちゃんと子ども?  僕が知っている語彙で収まるような関係じゃなさそうだった。  それって、普通じゃないってことだ。  普通じゃないということは化け物ってこと。  化け物って、人間じゃないってこと。  だから普通じゃないってことは人間じゃないってこと。  僕はそう理解して生きてきた。  でもこの人は化け物じゃない。この人達は。  僕から見れば、すごくキラキラして見える。嫌悪はない。むしろ何故か羨ましいと思った。近付きたいって、思ってしまった。 「突然で申し訳ないんだけど、時間があったら、いちごが飲めるお店を案内、して欲しいなあ、なんて……?」  カケルがノエルの様子を伺うようにちらちら横目で見ながら、僕に笑いかけてきた。 「構いませんよ」  自然と出た言葉だった。  理性危ない橋を渡らないほうがいいと思うのに、心の奥の方でそれを完全に拒絶した。  この人達絶対普通じゃない。
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