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 でもどうしてこんなにキラキラしてるんだろう。気になった。  近付いたら、僕もキラキラできるのかな。 「ありがとう! 俺は高瀬翔。翔でいいよ」 「僕は樫崎……樫崎優月」 「じゃあ優月、よろしく」  びっくりした。  下の名前で呼ばれるなんて思わなかった。  大学の知り合いはみんな僕のことを名字で呼ぶ。  それが普通なのに。  翔は僕を少しもためらわずに下の名前で呼ぶ。  僕の見立ては間違っていなかったんだと思った。ノエルもそうだけど……彼らは僕とはまるで違う世界にいる。  でも彼の屈託のない笑顔を見ていると、下の名前とか上の名前とか、本当にちっぽけで重箱の隅をつつくような心底どうでもいいようなことのように思えた。  僕の考えていることなんか知らない翔は、ノエルを見て苦笑する。 「……まだいじけてるの。ほら、いちご探しに行くよ……こいつはまあ、もう分かってると思うけど、ノエル」 「……うさぎのノエル」  僕と翔はノエルが呟いた言葉の意味が分からずに固まった。ノエルがぐずりだす。 「うさぎのノエルとって」 「これ?」  翔は空いている手で、ノエルのリュックから黒うさぎをおもむろに取り出してノエルに渡した。黒うさぎがノエルの小さな腕の中で絞めつけられる。この黒うさぎは『うさぎのノエル』って名前らしい。変なの。翔も同じようなことを思っていたみたいで翔に釣られて僕も笑った。翔は黒縁の眼鏡越しに優しいまなざしでノエルを見つめている。その眼差しに釘付けになってしまう。 僕、熱があるみたいにボーッとする。気圧のせい……かな?  なんだろうこの感じ。  変な気持ち。不思議な気持ち。むずむずする。 「優月、この町にいちごの飲み物を置いている店ってある?」  自動販売機から五百円玉を取り出して、こっそり黒うさぎのポシェットに戻した翔が僕に向かって、優しい静かな声で言った。 「……あるよ」 「本当? どこにある?」 「僕の帰るところに」 「え?」 「普段はコーヒーと紅茶を出してる喫茶店なんだけど……今の時期はいちごが旬だから、マダムが……店主がよくジュースにしてる。だけど、僕今『お使い』中で、羽黒町のお菓子屋さんに行かなければならないから……それが終わった後なら案内できる、と思う」
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