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束の間、もどかしそうな表情をした崚は「俺、こんなんだよ……」と徐に服をたくし上げ、部活で鍛えられた割れた腹筋を見せてくる。
「そんな遠慮なく見せて……」
ひかるは片腕を立てて上体を起こすと、そう言ってため息を吐いた。
自分がどんな思いで耐えているのか。
手を出さないように努めているのか。
本当に、分かっていないんだね。
「俺のこと誘ってる?」
崚の頭の左右に手を付き、見下ろす。
瞠目した直後に赤面する相手を眺めながら、その真意を理解したひかるは微笑んだ。
「大人しいと……俺、このまま襲うよ」
「……っ!」
普段は「僕」と言うのに、こういう時ばかり「俺」と使い分ける可憐な顔立ちは、一人称を変えただけで一気に艶めいて。
唐突な変貌に魅了され圧倒された崚は、指先一つ動かせなくなる。
相手のそんな言葉選びや、無理のない強引さに弱いのだと思い知らされる。
不意に見せる、積極的な一面に溺れてしまっているのだと。
それもさっき、本人にバレてしまった。
彼の嬉しそうな微笑は、きっとそう。
ふと伸びてきた指が自分の腹部を這う。
そっと撫でた後、感触を楽しむかのように手の甲でも触れて。
「擽ったい……」
「……これも?」
脇腹に近づく、ひかるの顔。
吸い付くようなキスはさっきと変わらず擽ったかったのに、小さな唇から現れた赤い舌に素肌を舐め上げられて。
軽く喰まれて。
甘い戦慄と、滲む熱。
「……っ、ひかる……」
「嫌だった?」
「……違う、けど……っ」
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