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睡眠と覚醒の狭間
「ただいま。」
「遅かったわね。もう10:30よ。はやくお風呂入りなさい。」
「ごめんね。もうお母さん寝るよね。さっと入っちゃうね。」
母親の機嫌を損ねたくなくて、本当は今すぐ横になりたかったけれど、私は母親の言う通りすぐにお風呂に入った。
「やばい、また目が冴えてきちゃったなぁ。」
お風呂を上がって化粧水をつけていた時、身体がずしっと重くなってきていた。
でもいつものように脳は起きようとしているのが分かった。
「寝るんじゃない。まだまだ頑張れ。まだまだ眠るなど許さない。」
私は、重い腕を上げて歯を磨き、作り笑顔で髪を乾かした。
「まだ火曜日なんだなぁ。」
私は、ベッドに入り「今日も眠れないのかな」と言う不安を抱きつつ目を閉じた。
しばらくすると、何者かの強い力で暗闇に引き摺り込まれるような眠気に襲われた。
あまりにも強い力で暗闇に引き摺り込まれるので、睡眠と覚醒の狭間で眠りに入ることに反発している自分がいた。
「こっちへ。」
「いや、そっちは、怖い。行きたくないよ。」
「こっちへ。」
巨大な黒い暗闇の中から男の太く低い声がする。
このまま引き摺り込まれたら、
もう現実世界には戻ってこれないような恐怖を感じた。
しかし私は男の声がする暗闇の世界へと引き摺りこまれたのだった。
その瞬間、私は映像をみた。今まで見たことがあるようなないような部屋の中で1人でいて、私は窓から空を眺めていた。
「こないで!もういやだよ!やめて!」
私は真っ黒な世界から飛び起きた。
冬がこようとしてるのに汗だくで息遣いが荒い。
自分の中指が痛いと思い指を見た。すると自分の爪で自分の中指を思いっきり押していたようだった。跡が赤くいたいたしかったし、突き指をしたような指の内部の違和感もあった。
悪夢はよく見る。
姿が見えない誰かに追いかけられる夢。
無理矢理何かをさせられそうになる夢。
夢は、待ってはくれない。自分の気持ちとは裏腹に、スピーディーに物語が展開されていく。
夢を見ない方法を探して見たが、どこにも情報はなかった。この世に生がある以上、夢を見てしまうのが人間という生き物らしい。
「このまま眠るように死ねたら、楽なんだろうか。それとも死んでからは悪夢の中に一生い続けることになるんだろうか。」
翌朝、
私の目の下には黒く青いクマがびっしりついていた。
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