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寝室
僕は苛立たし気にオフィスの壁にかけられている丸い壁時計を見上げた。
針は八時三十分を指していた。
以前は日付が変わるまで仕事をしていても平気だったのに......。
今日は金曜日。彼女が家に来る日だ。
彼女は金曜の夜にやって来て美味しい手料理を作って待っていてくれる。そして掃除やら洗濯やら色々と僕のお世話してから日曜の夜には帰ってしまう。
本当は彼女の会社の前で待っていて、毎日でも一緒に帰りたいところなのだが、仕事が終わるのはいつも僕の方が遅いから、そうもいかない。
平日は我慢するとしても、金曜はもうこれ以上は辛抱できない。
僕は無理矢理仕事に方をつけると、鞄を引っ掴んでオフィスを飛び出した。
課長が怪訝そうな顔をしていたけれど、知った事じゃ無い。その分日中効率的に仕事をこなしておいたから、全体から見たら仕事効率は上がっている筈だ。
僕は駅に向かいながら彼女に電話をかけた。
オフィスから家までは三十分くらいかかってしまう。
「気にしなくて良いよ。金曜は遅くなっても大丈夫なメニューにしてあるし。私もさっきお菓子つまんだし......」
電話の向こう側がピンク色に染まったのが見える気がした。
「はい、これ」
彼女の作ってくれたビーフシチューを美味しく平らげると、僕は彼女に月刊「ドールハウス」の第二号を手渡した。
「わあ、ありがとう」
彼女の周りがローズ色に色づいた。
第二号は、寝室だった。可愛らしい花柄のベッドも付いていた。
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