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「これ、どうするよ」  誰かがそう呟いたが、動ける者はいない。  それほどに絶望的な状況が目の前に広がっていたのだ。「机ってこんなにモノが入るんだ」という驚きに全員が支配されてしまっていた。  その衝撃から一番に脱したのが私だった。目の前に転がってきた細い金属スティックが爪先にぶつかったことで呪いが解けたのかもしれない。 「……いや! 片付けなきゃ!」  私は足元のスティックを拾う。私の声に徐々にクラス中が我に返っていき、最後には全員で片づけを始めた。  いやほんとよくこんなに入ってたなあ。机くん、キミ本当に頑張ってたね。とつい机を労ってしまうほど、沢山のものを搔き集めては詰め込んでいく。  そしてクラス全員の団結の甲斐あって、下駄箱の掃除に行っていた廣井くんが教室に帰ってくる頃にはすっかり片付いていた。 「あれ、なんかあった?」 「ううん。なんにもないよ」  教室に入った途端に彼がそんなことを言ったので、私は慌てて否定した。彼が現れた瞬間に走った周囲の緊張感に気付いたのかもしれない。 「そっか」  そう言って廣井くんは自分の席に着席した。「あれ、綺麗になってる」という彼の呟きに私はもう一度慌てる。いや結構適当に詰め込んだのに、もっとひどかったのか。   「……あれ、ビー玉がないや」  
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