2

3/3
前へ
/10ページ
次へ
 ビー玉?   唐突なワードに意味を捉え損ねた私をよそに、彼は辺りをきょろきょろと見回す。 「あ。ごめん清水さん、そこにあるビー玉取ってもらってもいい?」  彼が私の後ろの床を指差して、私がそちらに視線を向けると床の端にガラスのビー玉が落ちていた。 「はい」 「ありがとう」 「でもなんでビー玉持ってるの?」 「二か月前の体育の授業の時に、体育倉庫の裏で見つけたんだ。珍しい色だったから持って帰ってきちゃった」  大したエピソードではなかった。  でも、そんなに大したことないエピソードを二ヶ月間もよく憶えてたな、とも思った。 「……もしかして、その机の中身のもの全部憶えてるの?」 「え、うん。そりゃあね」 「拾った時のエピソード込みで?」 「うん。全部ね」 「え。すご」 「僕、記憶力結構いいから」  廣井くんはそう言って笑った。  確かに彼は学校の成績もいい。クラスメイトの名前もすぐ憶えていたし。 「ところでこの机綺麗にしてくれたのは清水さん?」 「え、うん。たぶん」 「そうなんだ。ありがとう」    綺麗にしたというか、適当に詰め込んだだけなんだけど。   「清水さんって掃除得意なんだね」  この時だったのだろう。  私が彼の中でお掃除キャラになってしまったのは。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加