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「親に年末だから部屋を片付けろって言われたんだけど、僕一人じゃどうにもならない。そこで清水さんの掃除スキルを見込んで頼みがあるんだ」 「いやだ」 「君は駅前にあるカフェのストロベリーパフェが大好きらしいね。お礼にご馳走するよ」 「……くっ、小癪なっ」  というわけで。  パフェにあっさり釣られた私は廣井くんの家に大掃除の手伝いとして招かれ、大きなビニール袋4つをパンパンにしたところで息を吐いた。 「ふぅ、こんなとこかな」 「僕の思い出たち……」 「最後に何か伝えたいことがあれば今のうちだよ。もうお別れだから」 「それ完全に悪役のセリフだよ」  口を尖らせる彼に「いいからキミはそっち持って」とビニール袋2つを示した。  私たちは両手にゴミ袋を持って斜向かいのゴミステーションへと運ぶ。玄関を出る際、廣井くんの母親に「本当に、本当にありがとうね……!」と拝まれてしまった。  どさり、と重たい袋をゴミステーションに置いた私は大きく伸びをした。 「やっと終わったー!」 「うん、終わったね。もうお別れだ」  ゴミ袋を見つめて悲壮感を漂わせる廣井くん。  私はその視線を奪うように大きな声を出した。 「さてさて過ぎたことは忘れてパフェでも食べに行こうよ」 「まあ、ね。そうなんだけど」 「それにね、キミは帰ったら驚くと思うよ」  私は彼に笑ってみせた。  彼は呆けたような表情でこちらを見ている。 「うわあ、僕の部屋こんなに綺麗だったんだーって!」  
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