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「でも今日はありがとね。大掃除手伝ってくれて。おかげですごく綺麗になったよ」 「色んな思い出を処分しちゃったけどね」  私は笑って言うと、彼は苦笑した。 「いや、うん。まあそうなんだけどさ。でも清水さんを見てるとそれでもいいかもなって」 「え、私? なにそれ」 「なんていうのかなあ」  廣井くんはブレンドコーヒーを啜って、カップを置く。 「君はパフェを見てるんだなって思った」  彼は覗き込むように私の目を見た。 「パフェ? どういうこと」 「楽しい未来、って意味だよ」 「未来?」  彼の言葉の意味が理解できず訊き返すと「うん」と彼は頷く。 「君は掃除が得意だ。どんどん物を捨てられる。自分の未来にとってそれは必要か、それは本当に大切かどうか見極める目があるんだと思う」  思い切りがいいのもあるんだろうけど、と彼は笑って言う。 「でもその目は、サボテンばかり見てる僕にはないもので、本当に羨ましいと思った」  彼は一瞬だけ私から目を逸らした。  そして、もう一度目を合わせて。 「だから僕も君の見てるものを見てみたいと思って、少しだけ視点を変えてみたんだ。自分の未来に目を向けてみた。そしたら気付いたんだ」    静かに言った。 「僕は清水さんのことが好きだなって」  
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