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 その言葉にティーカップを落としそうになって、私はすんでのところで握り直す。 「……うそでしょ?」 「いや本当だよ。むしろ何も思ってない人を部屋に招くと思ってた?」  僕はね、と廣井くんは微笑んだ。 「10年後も、君と一緒に大掃除をしたいと思ったんだ」    彼があまりに堂々とした告白をするから。 「……こういうとこは思い切りがいいんだね」  私は少し恥ずかしくなって、目を逸らす。  こんな展開は想定していなかった。  ただ、まったく考えてなかったわけじゃない。    手伝いに来てと頼まれたあの日から、彼を意識していない訳がなかった。    そう。  彼の言葉を借りるならこうだ。  ――何も思ってない人の部屋に掃除の手伝いに行くと思ってた? 「その後のパフェも、忘れないでよ」  そして小さく呟くように続ける。 「私も――です」  廣井くんは跳び上がるように前のめりの姿勢になった。  「え、聞こえなかった」 「あら残念」 「うそ、もう一回」 「次は10年後かな」  えええ、とショックを受けた顔で彼は言う。 「未来がどうなるかなんてわかんないよ」 「キミが変わらないなら、私の気持ちも変わらないと思うけど?」  私の明るい未来のために、今度ははっきりと伝えた。 「10年キミのままなら好きだよ」  
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