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「僕の部屋が片付かない原因は”思い出”だと思うんだよね」
私が床に落ちている謎のボタン電池をビニール袋に放り込む。
彼は言った。
「ほら例えばこのカード。ちょうど10年前に僕がハマってたカードゲームのレアカードなんだけどね。これが何枚買っても中々当たらなくて、それでも諦めず買い続けてやっと当たったんだ。今でもこのカードを見れば、あの当たった瞬間の興奮が蘇るよ」
私が床に落ちている謎の十円玉を豚の貯金箱に放り込む。
彼は続ける。
「他にも、この金色のネジ。このネジは僕が小学校に入学した時、おじいちゃんに貰った腕時計のネジなんだ。『おまえにはこの腕時計が似合う』ってぶっきらぼうに言われたっけ。今はもう時計は壊れてネジだけになったけど、あの時の喜びは壊れないや」
私が床に落ちている謎のプラスチックパーツをゴミ箱に放り込む。
彼は息を吐いた。
「つまりそういうことなんだよ。今ここに転がってるものはすべて僕の思い出を何度でも呼び起こすためのキーアイテムなんだ。僕の歩んできた人生だと言ってもいい」
私が床に落ちている謎のデザインのTシャツをクローゼットに放り込む。
彼は頷く。
「君はさっき僕の部屋をゴミ山だって言ってたけど、これでもまだ同じこと言えるかな。10年経っても、この山があれば僕は何度だって昔に戻れるんだ」
私が床に落ちている謎の言語のハードカバー本を本棚に放り込む。
彼は私を見る。
「そう考えてみたらさ。ほら、捨てられないでしょ?」
「10年ゴミのままなら捨てるよ」
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