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「ねぇねぇ!見て!」
ばぁちゃんが少し嬉しそうに、庭に積もった雪に足跡をつけた。
毎年しんしんと降り積もる雪を、鬱陶しそうに眺めているにも関わらず、子供の様に楽しそうな声をあげている。
「あぁ。足跡ね。」
反応に困り、苦笑いしながら、自分も久々に雪に触れてみる。
「冷たっ…。」
少しシャーベット状になった固まりにくい雪をぎゅっぎゅっと丸めてみる。
「そうじゃなくて!見て!」
「え?」
自分が踏んでつけた足跡の中心を指差して、私にもっとよくみる様に促す。
「あっ…。」
「可愛いでしょ。雪だるま♡」
足跡の中に、小さな雪だるまが凹凸でできていた。バケツの帽子を被った、ころころの雪だるま。
「可愛い…。」
モコモコブーツの裏に隠れた、控えめな雪だるま。
ばぁちゃんの裏に隠れた、無邪気な子供心。
「…そっか、いつも大人じゃ無くていいのか。」
ちょっとしたことで喜んで、ちょっとしたことを楽しんで、そんな毎日を送ることは、罪じゃ無いんだ。
頑張り過ぎる日本の皆さん。
考え過ぎる世界の皆さん。
この世は案外、単純かもしれませんよ。
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