塵積もりて”山”

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塵積もりて”山”

「塵も積もれば山となる〜」 5月のある日。 栗色のショートヘアを(なび)かせながら、 サークルの同期・灰枝一葉は、くるくると踊っていた。 「お前は馬鹿か」 「馬鹿じゃないもーん」 「はああ」 そして俺は思わず、どでかいため息をついてしまった。 …それにしても。 俺は改めて辺りを見渡す。 一葉が踊る6畳間の一室。彼女はここで一人暮らしをしている。 休日の今日、俺は訳あって彼女の部屋に訪れていた…のだが。 なるほど、こういうことか。 足場の見当たらないほどに散乱した、中身のない弁当箱やお菓子の箱。 壁側に置かれたベッドや机は、異臭を放つポリ袋で覆われ、端っこだけが助けを求めるかのように微かに突き出ていた。 見るも無残なゴミ屋敷である。 呑気に踊る一葉とのコントラストに、 思わず目眩を感じながら、再び大きなため息をついた。 一体、どうなってんだ。
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