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…そして、現在に至る。
俺は大きく深呼吸をすると、呑気に踊る一葉の方を向いた。
「一葉」
「んーー?」
「掃除するぞ」
「ええええええええええ」
今にも泣きそうなほどに、眉をしかめて悲鳴を上げる一葉。
泣きたいのはこっちだー!
「ぜっったい、だめ!ぜっったいっ!」
ぶんぶんと首を大きく振って見せる一葉。
彼女は意地でも掃除なんかしないといった様子だ。
…ならばこちらにも策がある。
「一葉」
「…なに…?」
「交換条件がある」
「こーかんじょーけん?」
「ああ、もし掃除させてくれたら、
…何でも好きなものを一つやる」
その瞬間、一葉の表情がわずかに緩んだ。
俯いて、少しの間考え込んでいた一葉はおずおずと顔を上げると、
目を細めて、俺の方をじっと見た。
「……何でも?」
「ああ、何でも」
「……絶対?」
「ああ、絶対」
「………本当に5つも?」
「いや、1つ」
「くそ」
くそって言いやがった。
一葉はしばらくの間、考え込むように頭を抱えていたが、
ゆっくりと頭を上げると、心底悔しそうな顔でポツリと呟いた。
「…しかたない」
「たくっ」
そして、俺は一つ嘆息すると、早速準備に取り掛かった。
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