♯2

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♯2

無論彼女に見合うだけの男になるための努力は欠かさず行っている。プロテインは飲んでるし毎朝1kmランニングしてる。イメージトレーニングも忘れず最近は電気の紐を相手にシャドーボクシングを嗜む。身長も去年より3mm伸びた。体重は2kg増えた。筋肉って脂肪より重いからそのせいかな? それでも何故か陰キャを脱っせないので最終手段、女神に頼み込んだ。毎晩チートの女神に「能力カンストのモテ男にしてください!」とお願いしたらある夜美しい女神が夢に現れ、気の毒そうに言った。 「ちょっと…君じゃ……無理、かな?」 目を合わせてくれなかった。ひどい。 毎日毎日女神様に猥雑な言葉かけをしていたら全身筋肉痛のお仕置きを食らった。 それからとうとう、女神も妥協した。 「禁欲二ヶ月を守りなさい。達成すれば少しだけ不思議な力を授けましょう。」 禁欲…禁欲!?高校生に禁欲!? どんな拷問かと思った…。溢れる空想に何も答えてやれないなんてどんな試練よりも残酷だった。しかし俺は耐えた…耐えたぞ!! そして女神は俺に少しだけ不思議な力を分けてくれた。体に力がみなぎるのを感じる…早速脱衣室の鏡で自分の変化を確かめてみた! 「………。」 何も、変わっていなかった。 その後どれだけ祈っても女神は姿を見せてくれなくなった。禁欲二ヶ月が無駄だった…。侘しく1人で済ませ、手を洗おうと脱衣室の洗面所に向かった時だった! 「!!!」 目の前に、俺の目の前に美女がいる! ウブな気持ちが勝ち、咄嗟に目を覆ったがなんと愚かなことをしてるのかと隙間からチラリと覗いてみた。俺は彼女を知っている…? 氷雨君子!間違いない! 俺が心でひっそり想いを寄せる彼女が鏡の前に立っている!少しぶかぶかな服を着ていて、ドライヤーで髪を乾かしている。 桜色の肌を見れば彼女が風呂上がりと分かる。 「……。」 手を、振ってみた。反応無し。 物憂げに鏡を見つめ、黒髪を指ですいている。 なんて刺激的な光景なんだ! 納められた宝剣が先走って鞘から抜ける! 待て待て、相手が無視してるだけかもしれない。氷雨君子に限ってそんなことないと思いたいが試しに声をかけてみた。 「こ、こんばんわ!」 まるで飼われたオウムの返しのように声はひっくり返っていた。ドキドキしてた。 …反応、無し。眉間すら動かず。彼女は俺が見えていないのか?一方的に俺が見えているだけ?なんてご都合主義か…! それから秋雨隆一の不思議な日々が始まった。
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