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学校からの帰り道、コンビニで猫缶を買って家とは反対の方向へと向かった。
子供たちが遊ぶ公園を通り草木が生える茂みを抜け、小高い丘を昇ると柔らかい風が僕の右頬を撫でた。街の一部分を一望できる景色が広がる。
「にゃーん」
「元気だったか?ほら、今日も持ってきたぞ。」
高校に入学し少し経ってから見つけたこの場所は自分だけのお気に入りスポットだ。
なんとなく考え事をしたい時はこの場所へ来てここからの景色を眺めていた。
最近になって茶ぶちの猫がどこからともなく姿を見せるようになり、週に1回のペースでここに来ては猫に餌を与えながら話しをするのが僕の日課となっていた。
「今日も変わり映えのしない日だったよ。けれどこれがみんなが言う幸せってやつなのかなぁ?」
猫缶を貪りながらでも耳を動かし僕の話しを聞いてくれる、この一匹の猫になんてことのない話しをしながらここから見える街を眺めていたらほんの少しだけど気分が晴れる気がした。
「そうだ、今読んでいる本が今夜にでも読み終わりそうなんだよ!そうしたらまた感想を聞いてくれないか。」
「にゃーん」
空になった猫缶を鞄にしまい、猫の頭を一撫でして僕は来た道へと足を向ける。
オレンジ色の夕陽が背中越しでもわかるほど眩しかった。
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