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「ごちそうさま、お爺ちゃんの家に行ってくるよ。」
「…あまり遅くならないうちに帰ってくるのよ。」
夕飯を食べ終えた後、僕の声にチラリとも振り向かず食器を洗う母の表情はわからないが声のトーンであまり良く思っていないことだけは感じ取れる。
毎度のことだ。
家から一件隣、徒歩1分もない距離に父方の祖父が一人で住んでいる。
そこへ僕が頻繁に入り浸っている理由は二つ。
一つ目は単純に、小さい頃から僕はお爺ちゃんのことが大好きだから。
「お爺ちゃん!来たよ!」
「おぉ、夏生。前回持っていった本はもう読んだのかい?あれは分厚かっただろうに。」
「うん、ページ数は結構あったけど3日で読んじゃったよ。今回の本もすごく面白くてなんかこう....わくわく!わくわくしたんだ!
えーと、次はどれにしようかな。」
お手伝いロボットの出迎えを横目にやり、お爺ちゃんがあぐらをかいて座っていた居間を足早に通りすぎて薄いクリーム色の目隠しカーテンを開けた。
6畳もない狭い部屋に天井へと届きそうなくらい大きな本棚が3架。そこにビッシリと無数の本が並べられている。
そう、これが僕がこの家に入り浸っている二つ目の理由だ。
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