3.勇気と強さと

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「昔の話は私も何度も聞いたことがある。全世界に謎の新型ウイルスが流行する前は今みたいな世の中じゃなかったんだよね。」 「うん。」 「そのことが原因じゃなくても、昔はイジメや差別が多かった。 それに、自分の子供を虐待したり殺してしまう親もいたって。それもみんなが自分の感情を抑えることができていなかったから。人間は自らの欲望には忠実なんだって…。 感情のままに動くと人は寄ってたかって一人の人間を攻撃する、そんな醜い争いほど無駄なものはないって、小さな時からお父さんが私によく言っていたの。」 「お父さんが?」 燕の父親の話を聞くのはこれが初めてだった。 いろんな話をするなかで、燕はあまり両親の話題を口には出さなかったから。 「うん。それに今は学校でも社会でも、人はみんな平等でお互いに一人一人を認め合うことができている。もちろんそこに能力や性格の差はあるけれど、それも個性として捉えて国民全員がその人に合った仕事に就くこともできている。 だからこそ就職難なんて言葉も無くなって、貧富の差も無くなった。 AIの技術が発展したこともあって、結婚相手すらも自分に合った人とすぐに出会える。だから離婚をする人もいない。どこの家庭も円満なんだって。」 「そうらしいね。うちの両親もよく、今の時代は平和でありがたいって言ってるよ。」
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