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「確かに、確かにね。感情のまま誰かを傷つけるということが無くなった今はすごく良いことだと思う。
でも、ずっと思っていたの。争いを避けることが本物の平和なのかなって。」
『争いを避けることが平和なのか』
燕のこの言葉にドキリとした。
「私達はこうして言葉と言葉で話しをすることができる。もしも誰かを傷つけてしまったら謝ることもできる。
それをしないで最初から感情を潰して、言いたいことも口に出せないのなら大切な人とも本当の意味で分かり合うことができない気がする。」
それってすごく悲しい、そう言って燕は自らの膝を抱えた。
話しをして、分かり合う。今の世の中はそういったことから逃げている。
確かに出会った人間全員と話しをし、分かり合うことは難しいかもしれない。
どれだけ時間をかけて話しても、分かり合えない人間だっているだろう。
例えそうだったとしても、僕らは何度でも話しをすることができる。
分かり合えなくても、『分かろう』と思うことはできる。
感情のままに動いたとしてもその人の全てを否定するだけではなく、一部分だけでも肯定することができるのではないだろうか。
そのきっかけやチャンスさえも、今の僕らは最初から奪われてしまっているのだ。
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