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「うん、確かに良くなったこともあるとは思う。
けど…僕も今が正解なのかって聞かれると違う気がする。故意に誰かを傷つけるようなことをしなければ人間はもっと、もっと自由に感情を出して生きていいと思うんだ。それが人間の本来の姿だと思う。」
けれど…今が本来の姿じゃなければ、じゃあ一体僕達は何なのだろうか。
これからもこうやってみんなが歩いている安全な道を同じように歩いていくことしかできないのだろうか。
「変えられないかな、私達で。」
「えっ?」
「あはは、無理…だよね。言ってみただけ。」
右手をヒラヒラさせて笑ってみせる燕の笑顔はどこか悲しそうで、その表情に胸が痛む。
燕の言う通りだ。
なぜ僕はいつも『誰かが変えてくれること』しか考えられないんだ。
常に不平不満を抱えているくせに、何も行動を起こそうとしなんだ。
ーーそれに
「夏生…?」
「変えよう。」
燕の悲しい顔は見たくない。
「え…?」
「変えよう、僕達で。この世界を。」
燕の笑顔が、笑った顔が
僕は好きだ。
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