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「俺たちはもうすでに仲が良いじゃないか。なぁ、みんな。」
春人の声に他の生徒達もコクリコクリと頷く。
「違うんだ春人。そもそも君と喋るようになったのも『近くの席の生徒と友達に』と言う暗黙のルールがあるからだ。
みんなだってそうだろ?僕たちはもっと幼い時から大人達にそう言われてきた。そういうものだった。
せっかく『友達』と呼べる人間ができても、自分達から深い話しなんてしたことがない。君の好きな食べ物すら僕は知らない。
そんなんで本当に仲が良いと言えるのか。」
感情や表情を出さないと、誰と話しをしていても大して変わりがなかった。
自分の話しを進んですることもなければ誰かに興味を持つことも薄れている。
だからこの友情が偽りだとすら気付かない。
だってみんなそれが当たり前なのだから。
「どうしたんだよ平、お前は急にそんなことを言う奴じゃなかっただろう。」
一瞬、春人が眉間にシワを寄せた。
そうだ。僕はこんな奴じゃなかった。
いつも面倒なことからは極力逃げていた。
自分には何もできない。何も変わらない、変えられない、と。
そう言い訳を並べて何もしてこなかったんだ。
でも
「気がついたんだ。」
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