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「それに、こういうことが騒ぎになったらどうするつもりだ。
それが先生達に見つかれば礼に通報されかねない。大人はそういったことに容赦ないのはお前もわかっているだろう。」
春人の言う通り、何かしらの騒ぎになれば例え自分の教え子であっても教師たちは僕ら生徒を礼につき出すだろう。
だってそれが今の世の中の決まりなのだから…。
「わかっている。だからせめて大人のいないところから始めよう。
ただいつもより時間をかけて話しをして、お互いを知るだけだ。きっとそんな騒ぎになんてならない。」
正直、これには僕自身も半信半疑だった。
普段深い話しをしない僕らが突然そんなことをしたら揉め事が起こる可能性だってあり得る。
けれど僕達には理性がある。言葉で伝えることができる。
やってみなければわからないことを、やらないで諦めるようなことはしたくない。僕達が『人間』であることの可能性をどうしても信じて見たかったんだ。
「そんな実験に俺達を巻き込まないでくれ。とにかく、俺はもう帰るよ。」
ピシャンと大きな音でドアが閉まる。
春人は軽い溜息を吐き、教室から出て行ってしまった。
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