1.平和な世界

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そう、お爺ちゃんの家にある本のほとんどはお爺ちゃんのお爺ちゃん....つまり僕にとっては高祖父(こうそふ)にあたる人物から受け継いだものがほとんどだった。 父方の家系は代々本好きが多く、その時代の本をいつまでも大切に持っていたらしい。 そうしてそれを自身の子供や孫達に受け継いでいる。 なので父の部屋にも数えきれないくらいの本があるのだが、お爺ちゃんの家に置いてある本は特に年代が古いものが多い。中には100年以上前の本もある。 「オチャガハイリマシタ」 カタンと、緑茶の入った湯飲みが僕の目の前に置かれた。 ジュースの方が良かったな、なんて思いながらもお手伝いロボット『イノベ』が入れてくれたお茶を一口飲む。じんわりと緑茶の苦味が口の中に広がった。 「今日のお茶もちょっと渋いね。」 「そうか、この子はお茶を入れるのが少し苦手なようだからなぁ。」 「スミマセン」 軽く頭を下げるイノベにいや、いいんだと言いながらお爺ちゃんも同じようにお茶を啜る。 「けれど今は本当に便利な時代なんだよ。こういったロボットがいてくれるおかげで私のような独り身の老人はどれだけ助かっていることか。 夏生が今回読んだ本にもこんなロボットはまだ登場してこないだろう。」 「.....うん。お話の中では車もまだ人が自分で運転をしていたよ。」 またお爺ちゃんの昔話が始まったぞ....なんて思いながらも、僕は湯飲みを片手に静かにお爺ちゃんの話しに耳を傾けた。 僕がこの家に来ると最近はこれがお決まりの流れなのだ。
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