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「今はほとんどの乗り物が自動運転になったおかげで昔と比べ交通事故は格段に減った。そのことによって悲しい思いをする人も減ったのは良いことだよ。
それにお手伝いロボットのおかげで家事や仕事も楽になったもんだ。簡単な会話もできるし、こいつのおかげで独りで暮らしていても不自由なことはないよ。」
ツルツルとしたイノベの肩に、お爺ちゃんはポンっと左手を乗せた。
肌色の人形ロボットであるイノベは人工知能が搭載された所謂『AI』だ。左胸には長方形のランプも付いている。
ここ何十年かでAIは急速な進化を成し遂げ、今は一家や一企業に一台あるといっても過言ではない。
「あまり人間と変わらないもんね。」
「アリガトウゴザイマス」
僕の方を振り向き、イノベはその黒い瞳を光らせた。人間みたいだね、と言われることが嬉しいのだろうか。僕にはそれが何故なのかよくわからない。
「どちらかというと変わってしまったのは人間の方なんだろうなぁ。」
「……。」
何度も何度も、お爺ちゃんが話してくれる昔の話。
お爺ちゃんも僕くらいの歳の時にお爺ちゃんのそのまたお爺ちゃんから聞いたのだと、その思い出を語る。
今の世の中とは全く違う世界がそこにはあった。
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