赤星雪朗のゲーム

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 お怒りの理由はわかっている。  校舎から運動場へと降りる階段の横に、学校側がユニバーサルデザインと言い張る荷運び用の斜面がある。その頂点から硬球を転がして、二秒後に追走スタート、ボールを拾ってどれだけ早く止まれるか皆で競った。  仲間の一人が止まりきれず斜面を駆け抜け、用具室に突っ込んで壁に大穴を空けた。おそらくその件だろう。  プールサイドでシャトルランをやったときも落ちてずぶ濡れになった連中の代わりに怒られた。  屋上から自由落下させたバスケットボールを受け止めるまでに何回手を叩けるか競ったときも、受け止め損ねて鼻血を出した奴のせいで呼び出しを食らった。  数回目に罰として赤星は赤茶の髪を黒く染め直させられている。  濃過ぎる黒は青みを帯びて光沢を放っており、雪朗はそれを「カラスの濡れ羽色」と形容した。すると赤星は「濡れ場、いいね」と気に入り、今ではカラスの濡れ羽色とハリネズミのような髪型がトレードマークになっている。 「発起人はつらいね。次の罰は丸刈りとか言ってたな」 「お断りだな。ツルツルとメガネじゃキャラが渋滞だ。お前だって困るだろう」 「バックレるか。超絶に難易度の高いケンケンパでもやろうぜ」 「委員会はいいのか?」 「お、お前今、委員会はいいんかい? って言いそうになったろ」 「歯、食いしばれ」  おどけた調子で逃げる赤星を、拳を握った雪朗が追いかける。  鞄を取りに戻ると見つかるのでそのまま校舎を出た。校門を抜けるときチャイムが鳴り、同じタイミングで背後から声をかけられた。 「またサボりか?」  肩をすくめて振り返ると、進学クラスの桐谷だった。
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