赤星雪朗のゲーム

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 青空を映した窓が一つだけぽっかりと開いている。  対面の校舎に向かって飲み終えた紙パックを振りかぶった。  ぎゅうぎゅうに固めて、丸くしてある。 「上級生の教室だ。殺されるぞ」 「じゃあルール変更だ。入れたら勝ちじゃなく、逃げ切ったら勝ち」  ハリネズミのように立てた髪が揺れた。 「赤星雪朗」  呼ばれて二人振り向く。赤星と、雪朗。 「あんたたち、またなんかやった?」  雪朗はメガネのブリッジを中指で押さえた。 「さすが委員長、地獄耳」 「お、新しい必殺技か?」 「古いアニメのね。別名デビル…」 「地獄耳に興味持たない。指導部で先生が叫んでるよ」  騒ぎを起こすたび、赤星! 雪朗! と続け様に叫ぶ。おかげでコンビ名として定着してしまった。渡辺雪朗はクラスに渡辺が三人いるため師も生徒も雪朗と呼ぶ。 「さっさと頭下げてきて。今日は委員会よ」 「へいへい」  踵を潰したスニーカーがスリッパのような音を立てる。対して雪朗は摺り足のように無音だ。
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