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「浮気なんかしちゃダメだよ」
「だ、誰?」
出てきたのはボサボサの白髪を垂らした老婆だった。
私は老婆の顔を思わず凝視した。
「あ、あれ?私にそっくり」
「そうだよ、私は20年後のあんたなんだからね」
「に、20年後?」
どうみても目の前の人物は70歳を過ぎているようにも見える。
私はまだ20代後半だ。20年でこんなに老けるとは思えない。
「何で20年程度でこんなに老けるんだ、と思っているね」
私は頷く。
老婆は言った。
「私は20年後の未来から自分の過去を変えるために来た。
あんた、浮気を考えていただろう。
でも決して浮気をしてはダメだよ。
そうするとすべてを失うことになるよ」
「すべてを失う?」
「ああ、20年前私は夫に嫌気がさして浮気をした。
だけどそれが発覚して夫に慰謝料を支払うことになり離婚した。
夫に捨てられ浮気相手にすがったが、拒絶された。
会社の人や友人たちにも、浮気を知られて縁を切られた。
会社をやめることになり、その後勤めた会社はブラック企業で程なく退社。
その後は派遣やパートなど、安い仕事にしかつけなかった。
経済的に支えてくれる人が欲しいと婚活もしたが、うまくいきそうだった
相手に元夫が過去の離婚理由を教えてしまい、破綻となった。
それからずっと孤独で貧乏な暮らしだよ」
老婆は悲しそうな顔で言った。
「それは辛い思いをしましたね・・・
確かにそんな目にあうくらいならこのまま結婚生活を続けたほうがいいかも」
私はそう口に出したが、同時に夫の顔を思い出してため息をついた。
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