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黒樹は、盛大なため息を付いた。
「野生の勘ってヤツ?流石だね」
「なに?」
「さっきまでいた客、捜してたよ、楓のことを」
「一応聞くけど、なんで?」
楓の問いに、黒樹は、冷たい目で楓を見つめた。
「自分の胸に聞いてみて?」
「……はい」
巻き込まないでほしいと、ぼやきながら、黒樹はテーブルについた。それを目で追いながら、楓は気になることを尋ねる。
「情報を提供しちゃったの?」
「したよ。仕事だもん」
「まーじーでー?」
泣きそうな声をあげると、黒樹は、ニヤリと妖しく笑った。
「まぁ、もう覚えてないだろうけどね」
一瞬、反応に遅れた。
黒樹は、他人にはまるで興味を示さず、関わろうとしない。
それなのに――――。
「美味しい夕飯が食べたいなぁ」
感情がこもっていない声が聞こえた。
楓は、先程までのバツの悪さと罪悪感がすっかり消えていくのを感じた。
「承知しました」
ここには、不思議な暖かさがある――――。
捜し物承ります。ーおそうじー:END
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