キレイに

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キレイに

この国には、「闇」がある。「闇」と呼ばれる不思議な力が。誰も、見たことも触れたこともない。 しかし、それは確かに存在するのだ。  料理はできる。  買い物も、何故かおまけをもらうくらいにはこなせる。  洗濯も、もちろん、掃除もできる。  (かえで)は、何においても、広く浅くが基本だった。  見た目は、「かるい」とよく言われた。それを否定できないくらいに、よく言えば、人付き合いがよい。来る者は拒まないし、去る者は追わない。わりと積極的なほうだし、落とすと決めたら必ず落とす。    それが、楓だった。  最近、それに変化があった。  寝起きする場所も、その時々で変わっていたのが、一定になったのだ。  それは、街の広い通りを入っていった路地の奥にあった。  主は、黒樹(こくじゅ)という少年だ。正しくは、少年のように見える、なにか。黒い髪と黒い瞳を持つ、クールな雰囲気を持つ少年だ。  彼は、そこで、魔術を使った捜し物の情報提供をしていた。  楓の帰り道は、いつも同じ。複雑で細い路地を歩き、店舗側の扉から中に入る。  今日も、その通りにするつもりだった。  商店街で、お手伝い程度の仕事をして少しの収入を得て、帰路についたところだ。  楓は、数m先に見える現在の我が家を前に、神妙な顔つきで立ち止まった。そして、じっと行く先を見つめたあとで、来た道を引き返す。  住居スペースの方から帰ることは、めったにない。  そっと中に入り、扉を締める。 「おや、おかえり、楓」  同じタイミングで、店側から黒樹が入ってきた。  何故か、楓の笑顔は引きつった。 「た、ただいま」 「珍しいじゃないか、ちゃんと玄関から入ってくるなんて」 「悪い予感がして」   
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