♡プロローグ♡

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♡プロローグ♡

 ああ。  あの夜空の向こうには、何があるのかしら?  高級ブランドのお洋服も、とっても高価でキラキラのアクセサリーも。  苦労せずに手に入る。  毎日、毎日、きれいでカワイイものに囲まれて。  わたしは、この世でいちばん幸せな女の子。  でも、どこか満たされない。  籠の中の鳥でいるのは、もう飽きた。  自由に空を飛びたい。  連れて行ってほしい。  広い世界を知ってる誰かに──。  ♡  闇に支配される世界。  一人の男が獲物を狙っていた。  暗闇と同色のフードの下で、男の目は油断なく光る。  (あぅっ……)  男の身体が異常を知らせた。  (くそっ! こんな時にっ)  今回の獲物は大きい。  しかし──。男は身震いした。  (まぁ、しかし……。  ”コレ”が起こるってことは、止めといた方が良さそうだな)  意外にもあっさりと、男は引く算段を始める。  伝ってきたロープにつかまると、男の姿はスッと消えた。動きが速い。一瞬の後には、男は既に屋根の上でロープを回収していた。  と。折悪しく、もう一つの人影が屋根の上に現れる。  対峙する二つの影。  こんなところで油を売っている暇はない。  男は、人影に向かって言った。  「同業者か?   止めときな。ここは、この後ヤバいことになるぜ」  人影は何も答えず、ただ男を馬鹿にするように肩をすくめる。  「忠告はしたぞ」  男は人影の挑発に乗ることなく、素早く姿を消した──。  残された人影は、一拍置いて鼻で(わら)った。  (ヒヨッコが……。  この辺のパトロールは、もうとっくに終わってんだよ)  歌うように呟いて、瓦屋根の上をそろりと移動する。  ここの爺さんは多額のタンス預金をしている。  人影は、高揚感にゴクリと唾を飲み込んだ。  久々に大金が手に入る──。  その時。  周囲がパァッと明るくなった。  投光器だ。  見下ろせば、いつの間にか赤色灯を光らせたパトカーが数台で屋敷を囲んでいる。  不意をつかれたせいで逃げ場を失った。  「畜生……!!」  悪態をついても、時すでに遅し──。  ーーー  男は駆けていた。  後方でパトカーのサイレンが聞こえる。  勘が当たっていたのだ。  彼の同業者たちは口を揃えて言う。  その「勘」が羨ましいと。    (馬鹿野郎! 人の気も知らないで……!)  時間がない。  こんな時、男はいつも、自分の身体を呪いたくなる。  (俺は!  ただ本能に従って、向かうべき場所を探してるだけだ……!)  トイレを──!!!
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