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冬
「今年は……随分と積もりそうだな」
外は雪が降りしきり、銀世界が広がっている。
「そうですね」
「これだけ寒いと、賊も出ませんね」
狛犬も二匹揃ってあまりの寒さに体を小さくさせて震えている。
「しかし、あなた様も去年は寒がっていたのでは? 神は寒さなどを感じないと思っていましたが……」
「ああ。だが、今年は不思議と寒くないな」
「風邪ですか?」
「それこそ、神には無縁のものだろう。俺は大丈夫だ」
今の様に無口な狛犬が言っていた『体感』は、普通の純血の神には確かに『無縁』な話だ。
「それならばいいのですが……」
「何か不調がありましたらすぐに言ってくださいね?」
「ああ、ありがとう」
でも、今となっては俺がそれらを感じていたのは「俺が半分は人間だったから」という『理由』で説明がついた様に感じる。
ただ、今のこの『寒さ』があまり感じられなくなった『理由』も、俺は何となく分かっていた。
「今年は無事に集会にも参加されて……」
「ご無事で何よりです」
そんな彼の心配をよそに、何事もなくつつがなく終わった。
まぁ、彼がかなり気にかけて、出来る限り俺のそばにいたからこそ、最上位の神である彼と仲の良い神様くらいしか寄って来なかった……というのも理由にはあるとは思うが。
「ああ、そうだったな。心配をかけて悪かった」
申し訳なさそうに言うと、二匹はほぼ同じタイミングで「いえいえ」と首を左右に振って否定した。
「今まで心配をかけてしまったが、ああいう風になる事はないはずだろう」
「何かありましたか?」
「いや、まぁ。心配性な人が俺に気をかけてくれた結果……と言うところだな」
「?」
「?」
事情を知らない二匹は不思議そうに首をかしげていたが、俺はそんな二匹の可愛らしい仕草に、思わず笑ってしまった。
「ん?」
ふと光が差したように思い、空を見上げると、いつの間にかさっきまで降っていた雪は止んでおり、キレイな満月が空高く登り、俺たちを照らしていた。
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