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秋
『――やっと、見つけた』
俺は、元々……何も知らずに生きてきた。
それこそ、根本的な話の『自分が何者なのか』というところから始まり、自分がどこで生まれたとか、そういったところも分からない。
とりあえず、分かっていたのは『俺は普通の狐ではない』という事だ。
俺が彼に拾われた時は、まだ小さい子狐だったのだが、その時点でその事には薄々気が付いていた。
そもそも『欲求』というモノが乏しかった……というのもあるとは思うが。
ただ驚いたのは、俺と出会った時もすでに『神』だったのだが、そんな彼が俺を見つけた瞬間。
『――良かった』
なぜか涙を見せた……というところだった。
当然、俺は彼に泣かれるような『理由』も……そもそも、彼が「なぜ俺を探していたのか」という事も分からない。
右も左も分からない……という事以上に、何が何だか分からないまま、神である彼に導かれるように、俺は修行に入った。
そうして今、俺は『あの神社』にいる。
「…………」
ただ『夢』だろうと思われる『あそこ』にいる人を見た時、俺は「見覚えがある」と思った。
でも、今になって冷静に考えてみるとそう思ったのは多分。目の前にいた『人』が……。
「俺に似ていたからか……」
色々と思い出しながら、そう独り言をブツブツと呟いていると――。
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