1/4
前へ
/12ページ
次へ

『――やっと、見つけた』  俺は、元々……何も知らずに生きてきた。  それこそ、根本的な話の『自分が何者なのか』というところから始まり、自分がどこで生まれたとか、そういったところも分からない。  とりあえず、分かっていたのは『俺は普通の狐ではない』という事だ。  俺が彼に拾われた時は、まだ小さい子狐だったのだが、その時点でその事には薄々気が付いていた。  そもそも『欲求』というモノが(とぼ)しかった……というのもあるとは思うが。  ただ驚いたのは、俺と出会った時もすでに『神』だったのだが、そんな彼が俺を見つけた瞬間。 『――良かった』  なぜか涙を見せた……というところだった。  当然、俺は彼に泣かれるような『理由』も……そもそも、彼が「なぜ俺を探していたのか」という事も分からない。  右も左も分からない……という事以上に、何が何だか分からないまま、神である彼に導かれるように、俺は修行に入った。  そうして今、俺は『あの神社』にいる。 「…………」  ただ『夢』だろうと思われる『あそこ』にいる人を見た時、俺は「見覚えがある」と思った。  でも、今になって冷静に考えてみるとそう思ったのは多分。目の前にいた『人』が……。 「俺に似ていたからか……」  色々と思い出しながら、そう独り言をブツブツと呟いていると――。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加