5人が本棚に入れています
本棚に追加
「おう、久しいな……って程でもないか」
「いえ、お久しぶりです。申し訳ございません、突然押しかけてしまいまして」
一人で待つには大きすぎる畳が敷き詰められた大広間の中心で、俺は気さくに片手を上げて入って来た彼に対し、正座して頭を下げた。
「いや、気にするな。大体の検討はついている。大方、お前があの社についてから襲われるようになった『睡魔』についてだろう」
「……はい」
「大体の検討はついたか?」
「私としては、あくまで『なんとなく……』という感覚の範疇を出ないのですが」
「――それでいい。それが『願い』だったからな」
「願い……」
「ああ。まぁ、お前も察しはついていたとは思うが、あの夢に出て来たのは、お前の母親だ」
「やはり、そうでしたか」
夢に出て来た『あの人』は、あまりにも目元が俺によく似ていた。
「あの社は元々は『俺の兄』つまり、お前の父親がいた。そして、お前の母親は、分かっている通り『人間』だ。お前は、半人半狐というワケだ」
「俺は半分人間……というワケですか」
「ああ、俺の兄は……病弱でな。本来であれば、この位も俺ではなく、兄が継ぐはずだった。しかし……思った以上に兄の病気は深刻でな」
「そもそもあやかしが『病気』になる事自体ありえないはずでは?」
「ああ、本来であればありえない話ではあるのだが、可能性としてあるのが、生活環境の変化と人間たちの価値観の変化ではないだろうか……と、俺は思っている」
「変化……ですか」
今の俺がいる神社もそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!