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昔こそ、少ないながらも人がお参りに訪れていたらしいが、今ではあまりにも暑い夏や、紅葉が美しい今の季節の秋以外はほとんどない。
「兄は、神の中でも純血だったからな。特に『大きな変化』というのに対応が上手く出来ない。だから、先代……つまり、俺の父は出来る限り『変化の少ない土地』を選び、兄に神剣と共にあの土地を治めるように言った」
「じゃあ、俺があの土地にずっといたのは……」
「無論。お前の生まれ故郷だからだ。そして、兄は人間の娘との間にお前をもうけた。ただ、その娘はお前を生んですぐに亡くなり、兄もその後を追うようにすぐに危篤の状態になってしまい、俺たちはお前の存在を知る事が出来なかった」
「…………」
「俺たちがお前の存在を知ったのは、主がいなくなった社に神剣を取りに行き、新たな主を立てようとしていた時の事だった。そこに住まう動物たちからお前の存在を聞き、急いで探した。何分、色々と立て込んでいて動物たちの声まで耳を傾ける余裕がなかったものでな。だから、俺はお前を見つけた時に『無事でよかった』って言ったんだ」
「そう……だったんですね」
まさか、そんな『過去』があったとは――。
「時期を見て話すつもりだったのだが、いきなり話されても困るだろうと思ってな。だが、そのせいでお前に話をするのが遅くなった」
彼は「すまない」と言って、頭を下げた。
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