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「気にしないでください。多分、最初の頃に話されても、信じられなかったと思います。ですので、頭を上げてください」
そう言って笑うと、彼は「そうか」と言って頭を上げた。
「それより、大丈夫か? 体調の方は」
「体調はすこぶる良好です。ですので、今年は……」
「分かった。もしかしたら、その人はお前が心配だったのかも知れないな」
「え」
「さっきも言った通り。お前は半分が人間だ。神の中には、それを良しとしない連中もいる」
「…………」
彼は「もちろん、そうじゃないヤツがほとんどだけどな」と、あぐらをかきながらすぐに付け加えた。
「母親が息子の心配をして何が悪い! そういう事だろう。だが、お前も十分成長した。それは俺が保証する」
「ありがとうございます」
「だから、まぁ。今度会う事あれば『大丈夫』の一言くらいかけてもいいかも知れんな。まだ一度も声はかけていないのであろう?」
「そう……ですね」
言われてみれば、今までその姿を見る事はあっても、こちらから話かける事はなかった。
それに、彼の言っている事は、一応筋は通っている上に、先ほどの過去の話を聞いていれば、何となくその『理由』も合っている様に思う。
「一度、話しかけてみようと思います」
俺がそう言うと、彼は「ああ、その方がいい。せっかくの家族水入らずってヤツだからな」と言って、豪快に笑ったのだった。
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